
こんにちは。 行政書士の落合です。
「終活」という言葉が浸透してきましたが、「デジタル終活」という言葉をご存知でしょうか?
デジタル終活とは、人生の終わりに備えて、デジタルデータを整理し、管理しておくことです。
今日は、デジタル終活について注意点を交え解説します。
目次
2| なぜデジタル終活が必要なのか
1 遺族が故人のデジタルデータを把握できない
2 パスワードが分からず、データにアクセスできない
3 不正利用のリスク
4 相続トラブル
5 精神的な苦痛
3| デジタル終活で何を整理すればいいのか?~棚卸し~
1 アカウント情報
2 データファイル
3 オンライン上の情報
4 デジタル機器
5 その他
4| デジタル終活の具体的な方法
1 デジタル遺産リストの作成
2 アカウント情報の整理
3 データの整理・バックアップ
4 オンラインサービスの解約手続き
5 遺言書への記載
6 エンディングノートの作成
7 信頼できる人への情報共有
5| デジタル終活の注意点
1 プライバシー保護
2 セキュリティ対策
3 法的制約
4 定期的な見直し
6| デジタル終活に役立つサービス・ツール ~専門家のサポートも視野に~
1 パスワード管理ツール
2 クラウドストレージ
3 エンディングノートアプリ
4 デジタル遺品整理サービス
7| まとめ
1| デジタル遺品とデジタル遺産のちがい

デジタル遺産とデジタル遺品は、どちらも故人が遺したデジタルに関するものですが、厳密には指すものが異なります。
デジタル遺産
故人がデジタル形式で保管していた財産を指し、金銭的価値があるものが含まれます。具体的には、以下のようなものがあります。
- ネット銀行やネット証券の口座
- 仮想通貨(ビットコインなど)
- 電子マネーの残高
- デジタル著作物(著作権があるもの)
これらは、相続の対象となり、金銭的な価値を持つため、相続手続きが必要です。
デジタル遺品
金銭的価値がないデジタルデータやコンテンツを指します。具体的には、以下のようなものが含まれます:
- スマートフォンやパソコンに保存された写真や動画
- SNSアカウントやブログの情報
- メールや連絡先データ
デジタル遺品は、金銭的な価値は直接的にはないものの、故人の個人的な情報や思い出が詰まったデジタルデータのことです。
ただし、この二つの言葉は、文脈によってはほぼ同じ意味で使われることもあります。
2| なぜデジタル終活が必要なのか
総務省の調査によると、2023年の日本のインターネット利用率は84.1%に達し、多くの人々が日常生活でインターネットを利用しています。SNSでの情報発信、オンラインバンキングでの金融取引、クラウドストレージへのデータ保存など、私たちの活動はデジタル空間に深く根ざしており、これらのデータは、私たちが生きている間に蓄積され、亡くなった後も残り続けます。
これらのデジタルデータは、故人のプライバシーに関わるものから、 価値を持つものきんゆうまで多岐にわたり、適切な管理をせずに放置すると、遺族にとって大きな負担となる可能性があります。具体的には、以下のようなリスクが考えられます。
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遺族が故人のデジタルデータを把握できない: 故人がどのようなサービスを利用し、どのようなデータを持っていたのか、遺族が全く把握できないというケースは少なくありません。故人のパソコンやスマートフォンにロックがかかっており、必要な情報にアクセスできない、あるいは、そもそもどのようなアカウントを持っていたのかさえ分からないという状況も起こりえます。
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パスワードが分からず、データにアクセスできない: 多くのサービスでは、ログインにIDとパスワードが必要です。故人のパスワードが不明な場合、遺族は故人のデータにアクセスすることができず、必要な情報を得ることができなかったり、不要なアカウントを削除できなかったりします。
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不正利用のリスク: 故人のアカウントが不正アクセスされるリスクも無視できません。特に、クレジットカード情報やオンラインバンキングの情報などが残っている場合、悪意のある第三者によって悪用される可能性があります。
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相続トラブル: 仮想通貨やオンラインバンキングなど、金融価値のあるデジタル遺産は、相続トラブルの原因となることがあります。これらのデジタル資産の存在や管理方法が不明確な場合、遺産分割協議が難航する可能性があります。
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精神的な苦痛: 故人の写真や動画、SNSの投稿などが、遺族にとって辛い記憶を呼び起こすことがあります。また、故人が生前に公開していた情報が、予期せぬ形で拡散し、遺族が精神的な苦痛を受けるケースも考えられます。
これらのリスクを回避するためにも、生前のデジタル終活はとても重要です。
3| デジタル終活で何を整理したらいいか?~棚卸し~

デジタル終活で整理すべきものは、多岐にわたります。ここでは、具体的にどのようなものを整理すべきかを解説します。
1. アカウント情報:メール、SNS(Facebook、X(旧Twitter)、Instagramなど)、オンラインバンキング、証券取引、クレジットカード、各種有料サービス(動画配信、音楽配信など)、ゲーム、ネットショッピングなど、利用している全てのアカウントのログイン情報(ID、パスワード、登録メールアドレス、秘密の質問など)をリスト化します。
2. データファイル: パソコン、スマートフォン、タブレットなどに保存されている写真、動画、音声データ、文書(Word、Excel、PDFなど)を整理します。重要なデータはバックアップを取り、不要なデータは削除します。データの保存場所(フォルダ名など)もリスト化しておくと、遺族が探す際に役立ちます。
3. オンライン上の情報: ブログ、ウェブサイト、ホームページ、クラウドストレージ(Google Drive、Dropbox、OneDriveなど)、仮想通貨、電子マネー、オンラインサロン、オンラインコミュニティなどの情報を整理します。これらの情報の管理方法や、必要に応じて解約・閉鎖する手続きを検討します。
4. デジタル機器: パソコン、スマートフォン、タブレット、外付けハードディスク、USBメモリ、SDカードなど、所有している全てのデジタル機器のリストを作成し、データの有無や処分方法を検討します。
5. その他: その他、デジタルデータに関連する情報として、以下のようなものも整理しておくと良いでしょう。
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携帯電話・スマートフォンの契約情報
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インターネット回線の契約情報
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ドメイン・サーバーの契約情報
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ソフトウェアのライセンス情報
4| デジタル終活の具体的な方法
デジタル終活は、人生の終わりをスムーズに迎え、残された家族の負担を軽減するための重要なプロセスです。ここでは、具体的な方法をステップごとに解説します。
1. デジタル遺産リストの作成
まずは、ご自身が所有しているデジタルアカウント、利用しているサービス、保存場所などをリスト化します。このリストは、デジタル遺産の全体像を把握するための基礎となります。
2. アカウント情報の整理
リスト化したアカウント情報について、ログインID、パスワード、秘密の質問などを整理します。これらの情報は、エンディングノートに記載する、パスワード管理ツールを利用するなどの方法で管理します。ただし、エンディングノートにパスワードを記載する場合は、紛失や盗難に十分注意し、厳重に管理する必要があります。
3. データの整理・バックアップ
パソコンやスマートフォンなどに保存されているデータのうち、必要なものはバックアップを取り、不要なものは削除します。バックアップ先としては、USBメモリ、外付けハードディスク、クラウドストレージなどが考えられます。データのバックアップと整理は、デジタル遺品整理の負担を軽減するだけでなく、大切な思い出を守ることにも繋がります。
4. オンラインサービスの解約手続き
不要なオンラインサービスは解約し、必要なサービスは承継方法を検討します。有料サービスの場合、解約手続きを怠ると、料金が発生し続ける可能性があるため、注意が必要です。
5. 遺言書への記載
デジタル遺産の承継方法や、誰に何を承継させるかを具体的に遺言書に記載します。特に、仮想通貨やオンラインバンキングなど、финансовые価値のあるデジタル遺産は、遺言書に明記しておくことで、相続トラブルを避けることができます。
6. エンディングノートの作成
デジタル遺産リスト、アカウント情報、データの保存場所、各種手続きなどをエンディングノートにまとめます。エンディングノートは、デジタル遺産だけでなく、ご自身の希望やメッセージを家族に伝えるための手段としても活用できます。
7. 信頼できる人への情報共有
作成したエンディングノートの内容や、デジタル遺産に関する情報を、信頼できる家族や友人と共有しておきます。情報共有の範囲は、ご自身の判断で決定しますが、共有する相手には、デジタル遺産の内容や管理方法を十分に説明しておくことが重要です。
5| デジタル終活の注意点

デジタル終活を行うにあたって、以下の点に注意することで、様々なリスクを回避することができます。
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プライバシー保護
個人情報や機密情報を含むデータを取り扱う場合は、情報漏洩に十分注意する必要があります。データのバックアップや削除を行う際は、専門業者に依頼することも検討しましょう。 -
セキュリティ対策
アカウント情報などを管理する場合は、パスワード管理ツールを利用したり、暗号化するなど、セキュリティ対策を徹底しましょう。パスワードは定期的に変更し、複雑なものを設定することが重要です。 -
法的制約
サービスの利用規約によっては、アカウントの承継が認められない場合があります。事前に利用規約を確認し、不明な点はサービス提供事業者に問い合わせるなどして、確認しておきましょう。 -
定期的な見直し
デジタル環境は常に変化するため、デジタル遺産リストやエンディングノートは、定期的に見直す必要があります。少なくとも1年に1回は見直しを行い、必要に応じて内容を更新しましょう。
6| デジタル終活に役立つサービス・ツール ~専門家のサポートも視野に~
近年では、デジタル終活をサポートする様々なサービスやツールが登場しています。これらのサービスやツールを効果的に活用することで、デジタル終活をスムーズに進めることができます。
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パスワード管理ツール
複数のパスワードを安全に管理できます。マスターパスワードを設定するだけで、全てのアカウントのパスワードを管理できるため、利便性と安全性を両立できます。 -
クラウドストレージ
データをオンライン上に保存し、共有できます。家族と共有するフォルダを作成し、そこにデジタル遺産関連の情報をまとめて保存するなどの活用方法があります。 -
エンディングノートアプリ
デジタル形式でエンディングノートを作成・管理できます。スマートフォンやタブレットで手軽に作成・編集できるため、時間や場所を選ばずに作業を進めることができます。 -
デジタル遺品整理サービス
専門業者が、デジタル機器の処分やデータの取り扱いを代行してくれます。自分ではデータの削除が不安な場合や、大量のデジタル機器を処分する必要がある場合などに便利です。 -
遺言書作成支援サービス
弁護士、司法書士、行政書士などの専門家が、遺言書の作成をサポートしてくれます。デジタル遺産の承継について、法的に有効な遺言書を作成したい場合は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。 -
デジタル遺産管理サービス
デジタル遺産の管理・承継に関する総合的なサポートを提供するサービスも登場しています。これらのサービスを利用することで、デジタル終活に関する様々な作業を代行してもらうことができます。
7| まとめ
デジタル終活は、人生の終わりに備えて、デジタルデータを整理し、管理しておくための重要なプロセスです。それは、単に自分のデータを整理するだけでなく、遺された家族がデジタル遺品に困らないようにするための、思いやりの行動でもあります。
この記事で解説した方法や注意点を参考に、ご自身のデジタル終活を始めてみませんか? デジタル終活は、決して難しいことではありません。少しずつ、できることから始めて、人生の終わりを安心して迎えるための準備を進めていきましょう。

執筆者
行政書士おちあい事務所 行政書士 落合真美
東京都内を中心に、遺言や相続、建設業や産廃業などの許可申請でサポートを提供。人に、会社に寄り添うことを大切にしています。