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こんにちは。行政書士の落合です。

全5回でお届けしている「安心の設計図」シリーズ。第1回では、認知症などで判断能力が低下した後に効力を発揮する「任意後見契約」について、第2回では、元気なうちから専門家と繋がっておく「見守り契約」についてお話ししました。

今回は、その中間地点とも言える重要な契約、「財産管理等委任契約」について詳しく解説します。

 

1| 「頭」はしっかりしているけれど、「足」が動かない不安

「認知症になった時のことは任意後見で準備した。元気なうちは見守り契約で安心だ。でも、その間の時期はどうすればいいの?」

実は、多くの方が直面するのがこの「中間期」の悩みです。 認知症と診断されるほどではない、つまり判断能力はしっかりしている。けれど、

  • 足腰が弱くなって、銀行の窓口まで行くのが億劫になった。

  • 重い書類を持って役所へ行く体力がなくなってきた。

  • 入院することになり、家賃の支払いや公共料金の手続きが自分ではできなくなった。

このような「身体的な衰え」や「一時的な環境の変化」によって、日常生活の事務手続きが困難になるケースは非常に多いのです。判断能力があるうちは、後見制度(任意後見)はスタートできません。この空白を埋めるのが「財産管理等委任契約」です。

 

2| 財産管理等委任契約とは何か?

一言で言えば、「自分の代わりに、特定の事務手続きや財産管理を行ってもらうための契約」です。

これは民法上の「委任契約」に基づいたもので、何を頼むかは自由に決めることができます 。 任意後見契約とセットで結ばれることが多いため、実務上は「移行型任意後見」の一部として位置づけられることもありますが、単独でも非常に有効なツールです。

 
具体的にどんなことを頼めるのか?

代表的なものには、以下のような業務があります。

 

  • 預貯金の管理: 銀行での入出金、通帳の記帳、生活費の支払い代行など。

  • 公共料金等の支払い: 電気・ガス・水道代や、介護保険料などの公的な支払いの管理。

  • 重要書類の管理: 権利証、実印、年金手帳などの保管。

  • 契約手続き: 介護サービスの契約、入院手続き、福祉施設の入所契約の代行など

3| 「認知後見」との決定的な違い

「任意後見」と「財産管理等委任契約」は似ているようで、法的な性質が大きく異なります。

 

項目 財産管理等委任契約 任意後見契約
開始時期 契約締結後、すぐ(元気なうち) 判断能力が不十分になった後
判断能力 本人にしっかりした判断能力が必要 判断能力が低下していることが前提
監督体制 当事者間の信頼関係が主(特約も可) 裁判所が選ぶ「任意後見監督人」がチェック

 

4| 専門家に依頼する「安心」と「透明性」

この契約は、身近なご親族に頼むことも可能です。しかし、親族間での管理は、後になって他の親族から「使い込みではないか」といった不必要な疑いを持たれるなど、思わぬトラブルの火種になることも少なくありません。

私たちのような法律の専門家が受任する場合、以下のような体制で「透明性」を確保し、ご本人とご家族の双方を守ります。

  • 事務報告の徹底
    いつ、いくら支払い、どのような手続きを行ったのか。定期的に収支状況を報告書にまとめ、ご本人(またはあらかじめ指定されたご親族)に提示します。

  • 証憑(しょうひょう)の厳格な保管
    領収書や受領書、契約書の控えなどをすべて整理・保管し、いつでも内容を確認できる状態を維持します。

  • 中立・公平な立場での管理
    第三者である専門家が介在することで、感情的な対立を防ぎ、適正な財産管理が行われていることを客観的に証明できます。

このように、専門家による「外部の目」が入ることは、ご本人の安心だけでなく、ご家族全体の平穏を守ることにも繋がるのです。

 

5| ケーススタディ:このような方に選ばれています

【ケースA:遠方に子供がいる独居の女性】
「お金の管理は自分でできるけれど、最近は銀行のATM操作も複雑に感じるし、何より窓口まで歩くのが辛い。子供に迷惑はかけたくないけれど、プロに月々の支払いや通帳の管理を任せられたら、今の家でずっと安心して暮らせるのに。」

→ 専門家が「手足」となって振込代行などを行い、生活の質を維持します。

 

【ケースB:急な入院が決まった男性】
「検査入院のつもりが長引くことになった。自宅の郵便物が溜まっているし、家賃の更新時期も重なってしまった。誰かに鍵を預けて対応してもらいたいが、適当な人がいない。」

→ 契約に基づき、専門家が郵便物の管理や更新手続きを代行します。

 

6| まとめ

財産管理等委任契約は、いわばあなたの「プライベート・マネージャー」を雇うようなものです。 「まだ誰かの世話になるほどではない」と無理をして、支払いを忘れたり、大切な書類を紛失したりする前に、頼れる仕組みを作っておく。それが、自立した老後を送るための「賢い選択」ではないでしょうか。

しかし、この契約にも限界があります。それは、あくまで「ご本人の意思」がはっきりしている間しか続けられないということです。もし、認知症などで判断能力が完全になくなってしまったら……?

次回、第4回は、この設計図シリーズの核心である「任意後見契約 〜いよいよ出番!判断能力が低下した後の守り神〜」について。これまで準備してきたバトンを、どのようにつなぎ、あなたが守られるのかを詳しく解説します。

 

執筆者

行政書士おちあい事務所
行政書士 落合真美

遺言、任意後見、死後事務委任などの生前対策や相続手続き、各種許可申請などでサポートを提供。人に、事業に、寄り添うことを大切にしています。

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