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こんにちは。行政書士の落合です。
「伝統的建造物群保存地区」
あまり馴染みがないかもしれませんね。日本の歴史的な建物や町並みを保存するために指定された地区です。この制度は、1975年に文化財保護法の改正によって導入され、城下町や宿場町、寺社の周辺にある歴史的な集落を対象としています。
文化庁のウェブサイトによると、令和6年8月15日現在で、106市町村で129地区が「重要伝統的建造物群保存地区」として選定されているとのことです。

このような地区は、建物の修繕等、行政によって制限がかけられていますが、その制限の中でいかにうまく保存をしていくか。そんな地区が存在することを、今回はぜひみなさまと共有できますと幸いです。

また、伝建地区についてのご相談もお受けしておりますので併せてお気軽に、下記お問合せフォームのリンクよりどうぞ。

1|伝統的建造物群保存地区の魅力 ~いにしえの美が息づく場所~

そぞろ歩けば、石畳の小道に響く足音。ふと見上げれば、白壁と格子窓が織りなす昔ながらの美しい風景が、まるで時間が止まったかのように静かに佇んでいます。そこには、歴史と共に息づき、伝統の香りを今も色濃く漂わせる、心温まる日本の原風景があります。

これらは、単なる古い建物や街並みではありません。そこには、先人たちの知恵と暮らしの息吹が宿り、世代を超えて大切に守り継がれてきた、かけがえのない文化遺産です。それが、文化財保護法に基づき国や自治体が指定する「伝統的建造物群保存地区」。この制度は、歴史的な集落や町並みを、その特徴的な建物だけでなく、一体の環境として丸ごと保存し、後世に伝えるための重要な枠組みなのです。この地区に指定されることは、そこに暮らす人々にとって大きな誇りであり、地域の魅力を高める重要な要素です。

しかし、この「いにしえの美」を未来へ繋いでいくためには、単に過去を懐かしむだけでは叶いません。そこには、建物の老朽化という現実や、現代の暮らしに合わせた「修繕」という、地道で、時に複雑な作業が伴います。このコラムでは、私たちがどうすればこの歴史ある風景を「承継」し、未来へ繋いでいけるのか。そのための大切な視点と、課題解決のヒントを探っていきます。

 

 

2|「守る」ということの現実 ~保存地区における規制とその理由~

【写真】美々津保存地区のいたるところに残る井戸
主に防火用として使われていたのであろうとのこと

伝統的建造物群保存地区に指定されることは、その地域の歴史的・文化的景観が国や自治体によって認められ、その価値が公に評価された証です。これは、住む人々にとって大きな誇りであり、観光振興や地域活性化にも繋がる「光」の側面です。

しかし、「光」があれば「影」もあります。このかけがえのない景観を維持するためには、厳格なルールが存在するのです。保存地区内の建物の新築、増改築、修繕、外観の変更、色彩の変更などを行う際には、通常の建築基準法や都市計画法による規制に加えて、各市町村が定める「保存計画」に基づく許可や届出が義務付けられています。

なぜ、このような厳しい規制が必要なのでしょうか。 それは、個々の建物の変化が、地区全体の景観や歴史的価値に大きな影響を与えるからです。例えば、伝統的な景観の中に突然現代的なデザインの建物が建てられたり、派手な色彩の塗装が施されたりすれば、その地区全体が持つ独特の魅力が失われかねません。私たちは、この規制が、目先の利便性や個人の嗜好を超えて、地域全体の公共的な価値を守るためのものであることを理解する必要があります。

しかし、この規制が所有者の方々にもたらす現実的な課題も少なくありません。

 

➀手続きの複雑さ
一般的なリフォームとは異なり、文化財保護法や各自治体の条例、保存計画に沿った詳細な申請書類や図面を作成し、市町村の教育委員会などの専門部署に提出する必要があります。このプロセスは専門知識を要し、時間と労力がかかります。

②費用の増加
伝統的な工法や、特定の地域でしか手に入らない材料の使用が求められる場合があり、現代的な材料を使うよりも高額になることがあります。また、規制に適合させるための設計変更もコストに影響します。

自由度の制限
「自分の建物なのに、なぜこんなに制約があるのか」と感じる所有者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これは「個人の自由」と「公共の景観保護」との間で、歴史的な価値を優先するための、やむを得ない制約なのです。

このように、伝統的建造物群保存地区における「守る」という行為は、単なる維持管理を超えた、深い理解と具体的な努力が求められる現実を伴います。

 

 

3| 「活かす」ための支援 ~修繕費補助と固定資産税減免という光~

厳しい規制がある一方で、国や地方公共団体は、所有者の負担を軽減し、地域の魅力を維持・向上させるための強力な支援策を設けています。これこそが、「守る」と「活かす」を両立させるための「光」の部分です。

 

➀修繕費補助(助成金)制度
伝統的建造物の修繕や改修にかかる費用は高額になりがちです。そこで、自治体や国は、その負担を軽減するために修繕費補助金(助成金)を提供しています。

  • 目的と対象
    これらの補助金は、伝統的建造物群保存地区の景観を保全するために、伝統的な材料工法を用いた修繕、外観の変更、耐震補強など、保存計画に沿った工事を対象としています。補助率は、工事内容や自治体によって異なりますが、工事費の一部(例:3分の1、2分の1など)が支給されるケースが多く、所有者の方々にとっては非常に大きな支援となります。
  • 申請から受領まで
    補助金の申請は、許可申請と同様に詳細な事業計画書や見積書、写真などの添付書類が必要となり、審査が行われます。工事完了後には、実績報告書の提出も求められます。これらの手続きは複雑であり、期限も厳しく設定されているため、専門家のサポートが非常に有効です。

 

②固定資産税の減免制度

さらに、伝統的建造物群保存地区内の土地や建物については、固定資産税の減免制度が適用される場合があります。

  • 制度の概要
    これは、特定の建造物群が、その地域の文化財として公共的な価値を持つことから、所有者の税負担を軽減することで保存への意欲を高めることを目的としています。減免の割合や適用条件は、各地方公共団体によって異なりますが、例えば、土地の評価額や建物の評価額の一部が軽減されるといった優遇措置が講じられます。
  • 国税・地方税の特例
    国税である所得税・相続税についても、特定の文化財に対する寄付や保存に関する特例措置が適用されることがあります。これらの減免や特例は、長期的な視点で資産を保有し、維持していく上での経済的なメリットとなり、伝統的建造物の持続可能な継承を後押しする重要な要素です。

これらの公的支援制度は、規制という「守り」の側面だけでなく、所有者が積極的に「活かす」ための強力な後押しとなります。制度を知り、適切に活用することが、伝統的建造物群保存地区の未来を拓く鍵となるのです。

 

 

 

4|伝統と現代の調和を目指して ~持続可能な承継のために~

【写真】古民家を利用した小上がりのカフェ

 

「歴史と共に息づく街並み」を未来へ繋ぐためには、単に古いものをそのまま残すだけでなく、現代の暮らしや技術と調和させながら、「うまく修繕しながら残していく」視点が不可欠です。

これは、昔ながらの工法や材料を尊重しつつ、現代の生活に必要な快適性や安全性を確保するための工夫を凝らすことを意味します。例えば、外観は伝統的な様式を保ちつつ、内部は現代の断熱材や設備を取り入れて住み心地を向上させる、といったアプローチです。これは、単なる建物の修理ではなく、「文化財」としての価値を損なわずに「住まい」や「事業の場」としての機能を維持・向上させる「持続可能な修繕」の概念と言えるでしょう。

この持続可能な修繕を実現するためには、所有者の方々の「守りたい」という強い思いはもちろんのこと、専門的な知識を持ったパートナーとの連携が不可欠です。文化財修復の経験を持つ建築士や工務店、そして煩雑な行政手続きや補助金申請をサポートする行政書士の存在が、この難題を乗り越えるための大きな力となります。

専門家は、単に申請書を作成するだけでなく、お客様の希望と保存地区の規制、そして利用可能な支援制度を総合的に考慮し、最適な計画を立案するお手伝いをします。

 

 

5|まとめ ~未来へ繋ぐ、私たちの「ふるさと」~

伝統的建造物群保存地区は、まさに「心温まる伝統の風景」であり、日本人が大切にしてきた「ふるさと」の象徴です。そこに息づく「いにしえの美」は、私たちだけでなく、未来の世代にも受け継がれていくべきかけがえのない宝です。

このコラムで触れたように、伝統を守り、未来へ繋ぐ道のりは、決して平坦ではありません。厳しい規制と向き合い、費用の問題、そして複雑な行政手続きを乗り越える必要があります。しかし、その一方で、国や自治体による支援策や、専門家のサポートという「光」も存在します。

私たちが今、この歴史的景観をどのように「承継」し、どのように「修繕」し、「活かしていく」のか。それは、この地域の文化と歴史、そして未来を形作る重要な選択です。

美しい街並み、そして日本各地の伝統的建造物群保存地区が、これからも「歴史が息づく街並み」として、昔ながらの美しさを感じることができる場所であり続けるために。そして、その魅力を次世代に語り継いでいくために。所有者の方々、地域住民、行政、そして私たち専門家が一体となり、知恵を出し合い、協力し合うことが何よりも大切です。

「いにしえの美」を永遠に未来へ繋いでいくために。

執筆者

行政書士おちあい事務所 行政書士 落合真美

遺言や相続、建設業や産廃業などの許可申請でサポートを提供。人に、会社に、寄り添うことを大切にしています。

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