こんにちは。行政書士の落合です。
前回のコラムでは、住まいを一つに限定しない新しい暮らし方として「ふるさと住民登録」をご紹介しました。
現在、総務省を中心に、関係人口の規模や地域との関係性を可視化するための「ふるさと住民登録制度」の創設が進められています。2024年に施行された、いわゆる「二地域居住促進法」を実効的なものにするためのデジタル基盤として、令和8年度以降の本格運用に向けた準備が加速しています。
最新の検討資料によれば、この住民登録の制度は「ベーシック」と「プレミアム」という2つのステージ(階層構造)が軸となっています。
本稿では、最新の報道内容も交えながら、それぞれのステージが持つ意味を詳しく解説します。
※本稿は、令和7年12月17日時点の総務省公報資料および、令和8年3月10日に報道された最新のニュースの内容に基づき作成しています。今後の閣議決定やガイドライン策定により詳細が変更される可能性がある点をご留意ください。
目次
1| 第1段階:【ベーシック登録】~関係人口の裾野を広げる「入口」~
(出典:総務省「ふるさと住民登録制度の検討状況について(令和7年12月17日)」資料)
「ベーシック登録」は、特定の要件を設けず、誰もがアプリ等を通じて簡便に登録できる仕組みとして想定されています。
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仕組みと登録の意義
市区町村への登録を通じて、都道府県レベルでの広域的な支援体制ともシームレスに繋がる仕組みが検討されています。これにより、利用者は一度の登録で、より広いエリアの情報を効率的に受け取ることが可能になります。 -
期待されるサービス
主な目的は「地域情報の提供」です。自治体から、一般の観光情報とは一線を画した「地域の現状」や「担い手募集(ボランティア、副業等)」などのディープな情報が直接届くようになります。 -
この段階が持つ価値
この段階は「地域経済の活性化」に寄与する層と位置づけられています。まずは特定の自治体との「緩やかな繋がり」を公的に認定してもらうことで、将来的な移住や拠点づくりを見据えた情報収集が可能になります。
2|第2段階:【プレミアム登録】~「担い手」としての深化~
(出典:総務省「ふるさと住民登録制度の検討状況について(令和7年12月17日)」資料)
ベーシック登録が「情報の受け取り」という入り口だったのに対し、プレミアム登録は、自らが地域の維持・発展に貢献する「担い手(プレイヤー)」として活動することを前提としたステージです。
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「担い手」としての具体的な活動(要件)
資料に示されている通り、プレミアム登録の基本は「年3回以上の担い手活動」の実施です。これは、単なる観光客ではなく、ボランティアや地域行事の伝承、あるいは副業を通じた課題解決など、実質的に地域を支える一員になることを意味します。この「活動実績」こそが、プレミアム住民としてのアイデンティティとなります。 -
デジタルが支える「担い手の証明」
「活動実績の証明」というハードルに対し、デジタルの活用による解決策が提示されています。
<対応方針(案)>
活動の簡易認定:現場でのQRコード読み取り等により、活動実績を即座にデジタル記録。
自動判定機能:実績が積み上がれば、システムが自動でプレミアム資格を判定。
これにより、利用者は「報告」という事務作業に追われることなく、
純粋に「担い手」としての活動に集中できる環境が整えられます。
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「担い手」を支えるサポート体制
国は、これら「担い手」となる人々を単なる労働力としてではなく、地域を共に創る「パートナー(ステークホルダー)」と位置づけています。下の資料の「②プレミアム登録」の項目には、円滑な活動を促進するための「各種サポート施策」の提供も明記されており、官民が一体となって担い手の活動をバックアップする仕組みを目指しています。
3| なぜ「2段階」の設計が検討されているのか(関わりの深化)
(出典:総務省「ふるさと住民登録制度の検討状況について(令和7年12月17日)」資料)
総務省の資料(目指す姿のイメージ)によれば、この2段階設計の狙いは、利用者の「関わりの深化」を段階的に促すことにあります。
いきなり地域の担い手(プレミアム)としての役割を担うのはハードルが高い場合でも、まずはベーシック登録で地域との接点を増やし、そこからプレミアムへとステップアップしてもらう。この「階段」があることで、利用者は自分のライフスタイルやリソースに合わせて、地域との距離感を柔軟に調整できます。
自治体にとっても、関係人口の「裾野(ベーシック)」と「核心(プレミアム)」を可視化することで、より効果的な地域活性化策を講じることが可能になります。これは、国が描く「持続可能な地域社会」のための戦略的な構造と言えます。
4| 制度を支えるデジタル技術と「官民連携」の広がり
最新の動向として注目すべきは、この制度が単なる行政の枠組みに留まらず、民間の観光事業者などを巻き込んだ広範なプラットフォームへと進化していく可能性を秘めている点です。
【最新ニュースより】
令和8年3月10日に配信されたニュース(トラベルボイス)では、総務省審議官へのインタビューを通じて、観光事業者が「準住民」を迎え入れる重要な役割を担うことが強調されています。
総務省の「ふるさと住民登録制度」とは? 関係人口創出へ「観光事業者が活躍する場」、その仕組みと効果を審議官に聞いてきた(トラベルボイス) - Yahoo!ニュース(※リンク先の記事は、配信元の都合により削除される場合があります。)
- データの活用
登録者の属性や活動実績がデータとして積み重なることで、自治体と民間が協力して、よりニーズに合った地域サービスを提供することが可能になります。 - 事務負担の解消
プレミアム登録の活動確認をアプリでの「QRコード読取」や「自動判定機能」によって簡便化し、民間現場でも活用しやすくする仕組みが検討されています。
こうしたデジタル基盤の整備により、将来的に官民が一体となって関係人口を支える、実効性の高い社会システムの構築が期待されています。
5| 制度の成熟に伴い重要となる「公的ルール」
この制度が案から実運用へと移り、プレミアム登録のように「権利と支援」が明確になるにつれ、これまでの「善意に基づく交流」は、より「公的なルールに基づく関係」へと整理されていくことが予想されます。
例えば、プレミアム層への「宿泊費補助」や「施設利用権」といった公的なメリットを受ける際、または、空き家を活用して地域活動の拠点を構える際、そこには必ず自治体の条例や民間の契約が介在します。
制度が2段階に整理され、関わりが深まるということは、同時にその関わりを支える「法実務・行政実務」の透明性が求められるということでもあります。私たち専門家は引き続き最新のガイドラインを注視し、この新しい仕組みが、利用者と地域の双方にとって誠実なものとして機能するよう、その動向を見守っています。
6| まとめ ~新しい仕組みが創る「帰りたくなる」未来と人口還流~
今回、この「ふるさと住民登録制度」を深掘りして見えてきたのは、デジタル技術が「人と地域の間にある壁」をそっと取り払おうとしている姿です。
これまでは、好きな地域があっても「通うきっかけ」や「関わり方」が分からず、どこか遠慮してしまうこともあったかもしれません。しかし、この制度によって「ベーシック」から「プレミアム」へという明確なステップが用意される見通しです。
- 「知る」から「関わる」への、なだらかな変化
誰もが自分のペースで、無理なく地域の一員(担い手)になれる道筋!
- デジタルの住民票がくれる「居場所」
その地域があなたを「大切な一員」として認めているという証!
~「また、あの街へ帰ろう」~
「ふるさと住民登録制度」が動き出す令和8年度は、私たちのライフスタイルが大きく広がる一年になることでしょう。
特定の場所に縛られるのではなく、自分の「帰りたくなる」場所を増やしていく。単なる「訪問者」という立場を超え、その地域にステークホルダーの一員として関わる選択肢が生まれる。この一人ひとりの選択の積み重ねこそが、都市部から地方への人口流動を生み出し、停滞した地域経済に「関係性の深化」という新しい風を吹き込みます。
この制度が、単なるデジタルツールに留まることなく、真の意味での「地方創生」と「人口還流」を実現するための確かな道しるべとなることを願っています。
執筆者
行政書士おちあい事務所
行政書士 落合真美
遺言、任意後見、死後事務委任などの生前対策や相続手続き、各種許可申請などでサポートを提供。人に、事業に、寄り添うことを大切にしています。