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こんにちは。行政書士の落合です。

「誰も住まなくなった実家、この先どうしよう……」

「そういえば、近所にずっと空き家になっている家があって、台風のときとか少し心配……」

みなさんは、こんな風に思ったことはありませんか?

いま、日本全国で「空き家」の数が過去最高を更新し続けており、テレビのニュースや新聞でも取り上げられています。かつては「地方の過疎化にともなう問題」というイメージが強かった空き家ですが、現在では東京などの都市部や、住宅街でも深刻な問題になっています。

こうした背景から、国も「空き家を放置させないための法律」を強化しています。その中心にあるのが「空家特措法(空家等対策の推進に関する特別措置法)」です。

この法律は、一見すると「ただ家を空けているだけの人には関係ない」と思われがちですが、実はすべての不動産所有者、そして将来実家を相続する可能性がある方にとって、絶対に無視できない重要な内容が含まれています。

今回は、空家特措法が作られた背景や現在の問題点、そして私たちが今から準備しておくべき対策について、分かりやすく解説します。

目次

1| 施行の背景~なぜ「空家特措法」が必要だったのか?~
  1-1 個人の財産には、行政も簡単には手を出せなかった
  1-2 放置された空き家がもたらす「4つの大問題」

2| 放置すると税金が6倍に!?「特定空家」のペナルティ
  2-1 「特定空家」に指定される基準

   2-2 所有者を襲う「経済的ペナルティ」

3| 2023年法改正でさらに厳格化!「管理不全空家」の新設
  3-1 「壊れる前」からペナルティの対象に
  3-2 早めの段階で固定資産税が上がるリスク

4| これからの大問題:見落とされがちな「マンションの空き家」

5| 家を「お荷物」にしないために、今できること

 

1| なぜ「空家特措法」が必要だったのか?施行の背景

まず、なぜ国がわざわざ法律を作ってまで、個人の持ち家である「空き家」に介入するようになったのでしょうか。その背景には、2015年の法律施行前に全国の自治体が頭を悩ませていた、いくつかの深刻な事情がありました。

 

1-1 個人の財産には、行政も簡単には手を出せなかった

法律ができる前、いくら近所の空き家がボロボロになって倒壊しそうでも、あるいはゴミ屋敷のようになって悪臭を放っていても、行政(市役所や区役所など)は簡単にその敷地に立ち入ったり、建物を壊したりすることはできませんでした。

日本において「個人の財産権」は憲法で強く守られているからです。他人の所有物を勝手に処分することは、たとえ行政であっても許されなかったのです。その結果、近隣住民から「危ないからどうにかしてほしい」という苦情が殺到しても、行政は「所有者に連絡を試みる」くらいしかできず、事実上の放置状態が続いてしまいました。

 

 

1-2 放置された空き家がもたらす「4つの大問題」

しかし、空き家が長期間放置されると、周囲の住環境には以下のような深刻な悪影響が及びます。

  • 安全性の低下
    老朽化が進んだ建物は、台風や地震の際に屋根瓦が飛んだり、外壁が崩落したり、最悪の場合は建物ごと倒壊して通行人に怪我をさせる危険があります。

  • 治安の悪化・火災のリスク
    人の目が届かない空き家は、粗大ゴミなどの不法投棄の温床になります。さらに恐ろしいのは「放火」の標的にされやすいという点です。

  • 衛生環境の悪化
    庭の草木が生い茂り、木々が隣の家に侵入するだけでなく、ネズミ、シロアリ、ハチなどの害獣・害虫が大量発生し、近隣の衛生環境を著しく悪化させます。

  • 景観の損壊
    街の中に何軒もボロボロの空き家があると、地域全体のイメージが低下し、周辺の土地の価値まで下がってしまうことがあります。

こうした「個人の財産だから」という理由では済まされない社会問題に対抗するため、2015年に誕生したのが「空家特措法」です。この法律により、行政は危険な空き家に対して、調査や指導、さらには強制撤去(行政代執行)といった強い措置を取ることができるようになりました。

 

2| 放置すると税金が6倍に!?「特定空家」のペナルティ

この法律の最大の特徴であり、所有者にとって最も大きなインパクトとなったのが、「特定空家(とくていあきや)」という制度です。

 

2-1 「特定空家」に指定される基準

空き家であるからといって、すべての家がすぐに処分されるわけではありません。適切に管理されていれば何の問題もないのですが、行政から「このまま放置するのはあまりにも危険だ」と判断されると、「特定空家」に指定されてしまいます。具体的には、以下のような状態の家が対象になります。

  1. 倒壊など、保安上著しく危険となるおそれがある状態

  2. 著しく衛生上変化(悪臭やゴミの山など)がある状態

  3. 適切な管理が行われないことにより、著しく景観を損なっている状態

  4. その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

 

 

2-2 所有者を襲う「経済的ペナルティ」

特定空家に指定されると、行政から「家を直してください」「解体してください」という「助言」や「指導」が入ります。

これを無視し続けると、次のステップである「勧告(かんこく)」を受けることになります。この「勧告」を受けると、所有者には非常に重い経済的負担がのしかかります。

通常、人が住むための家(住宅)が建っている土地には、「住宅用地特例」という優遇措置が適用されています。これにより、土地に係る固定資産税が最大で6分の1に軽減されているのです。「古い実家を壊すと税金が上がるから、あえて建物を残している」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

しかし、「特定空家」として勧告を受けると、この優遇措置が完全に解除されてしまいます。つまり、翌年から土地の固定資産税が実質的に最大6倍に跳ね上がってしまうのです。

さらに、それでも無視を続けると「命令」へと変わり、最終的には行政が代わりに建物を解体する「行政代執行」が行われます。この解体費用(数百万円にのぼることも珍しくありません)は、すべて所有者に全額請求されることになります。

 

3| 2023年法改正でさらに厳格化!「管理不全空家」の新設

2015年に始まった空家特措法ですが、その後も全国の空き家は増え続けました。そこで、さらに対策を前倒しするために、2023年12月に大規模な法改正が行われました。

この改正によって新しく導入されたのが、「管理不全空家(かんりふぜんあきや)」というカテゴリーです。これが現在、不動産を所有する多くの方にとって非常に重要なお話となっています。

 

3-1 「壊れる前」からペナルティの対象に

これまでの法律では、建物が今にも崩れそうな「特定空家」になって初めて、税金が高くなるなどのペナルティが科されていました。しかしこれでは、「完全にボロボロになるまで行政が動けない」「手遅れになってからでは対応が難しい」という欠点があったのです。

そこで2023年の改正では、「今はまだ特定空家ではないけれど、このまま手入れを怠れば、将来的に特定空家になってしまいそうな状態」の物件を「管理不全空家」として指定できるようになりました。

 

3-2 早めの段階で固定資産税が上がるリスク

驚くべきことに、この「管理不全空家」に指定され、行政からの改善指導に従わずに「勧告」を受けると、特定空家と同じように固定資産税の優遇措置(最大6分の1の減額)が解除されてしまいます。

つまり、「まだ頑丈だし、うちは大丈夫」と思って実家を放置していても、庭の手入れや簡単な修繕を怠っているだけで、ある日突然、税金が何倍にもなってしまうリスクが生まれたのです。国や自治体の姿勢は、「家を空けるなら、壊れる前からしっかり管理しなさい」という方針へと、完全にシフトしたと言えます。

 

 

4| これからの大問題:見落とされがちな「マンションの空き家」

ここまでは、主に「一戸建ての実家」をイメージしてお話ししてきましたが、実は今、専門家の間で最も懸念されているのが、「マンション(区分所有建物)の空き家問題」です。

「マンションは管理会社がいるし、オートロックだから空き家になっても平気では?」と思われるかもしれません。しかし、マンションだからこそ発生する、一戸建てよりもはるかに複雑なリスクが存在します。

 

4-1 1戸の空き室が、マンション全体をダメにする?

マンションの一室が空き家(空き室)になり、所有者と連絡が取れなくなると、以下のような問題がドミノ倒しのように発生します。

  • 管理費・修繕積立金の滞納
    空き室の所有者がお金を払わなくなると、マンション全体の維持管理をするための資金が不足します。

  • 建物全体の老朽化(スラム化)
    資金が足りなくなると、大規模修繕工事(外壁の塗り替えやエレベーターの交換など)ができなくなります。結果として、マンション全体の資産価値が暴落し、他の住民も引っ越してしまい、さらに空き室が増えるという悪循環に陥ります。

  • トラブルへの介入が難しい
    マンションの一室がゴミ屋敷化したり、水漏れを起こしたりしても、そこは「個人の専有部分」です。一戸建てのように行政が外から強制的に立ち入ったり処分したりすることが、法律の仕組み上、非常に難しいのです。

 

 

4-2 進む法整備と、今後の高いハードル

現在、築50年を超えるような高経年マンションが全国で急増しています。国もこの危機感から、マンションの適切な管理を促すための新しい制度を作ったり、所有者が分からない部屋があっても裁判所を通じて修繕ができるような民法のルールを作ったりと、法整備を進めています。

一戸建てを想定して作られた現在の空家特措法だけでは、マンションの複雑な権利関係をすべてカバーすることはできません。専門家の調査でも、「これからは都市部を中心に、マンションの空き家対策をどうしていくかが課題になる」と以前より指摘されており、2026年4月に改正区分所有法の施行に至りました。

今後、非常に注目されているテーマです。

 

 

5| あなたの実家を「お荷物」にしないために、今できること

法律が厳しくなり、放置するリスクがこれだけ高まっている今、私たちはまず、身近なところで自分の財産、あるいは親御さんの財産をどう守っていけばよいのでしょうか。

対策の第一歩は、「先送りにせず、早めに家族で話し合うこと」、これに尽きます。

2024年4月から「相続登記」も義務化されています。

空き家が放置されてしまう最大の原因は、実は「誰の持ち物か分からなくなること」です。親が亡くなったあと、名義変更(相続登記)をしないまま何年も経つと、ねずみ算式に相続人が増え、いざ売却しようとしたときには全員の同意をもらうのが不可能になってしまいます。

これを防ぐため、法律によって相続登記が義務化されました。正当な理由なく放置すると過料(ペナルティ)を科される可能性もあります。

 

「将来、実家をどう処分したらいいか分からない」

「遺言書を作っておいたほうがいいのだろうか」

「名義変更の手続きはどうすればいい?」

こうした不動産の相続や、将来の管理に関するお悩みは、非常に多くの法律や手続きが絡み合っています。だからこそ、問題が深刻化して「管理不全空家」に指定されてしまう前に、専門家へ相談することが大切です。

当事務所では将来のための「遺言書の作成サポート」など、みなさんの身近でお手伝いをすることができます。

「まだ親も元気だし……」と思わず、お盆の帰省や家族が集まるタイミングで、実家を含め「これからの家のこと」を少しだけ未来の話として、笑顔で話し合ってみてはいかがでしょうか。早めの準備こそが、大切な家族の資産を「負債」に変えないための、防衛策です。

 

 

執筆者

行政書士おちあい事務所
行政書士 落合真美

遺言、任意後見、死後事務委任などの生前対策や相続手続き、各種許可申請などでサポートを提供。人に、事業に、寄り添うことを大切にしています。

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