
こんにちは。行政書士の落合です。
「朝早く現場に行ったら、資材を置く場所がない」「イベントの設営を始めたら、すぐに警察に指導されてしまった」
建設業や解体業、イベント業などを営む事業者様にとって、「道路」は最も身近で、最も厳しいルールに縛られる場所です。道路使用許可は、単なる一枚の紙切れではありません。それは、「交通の安全を確保しつつ、あなたの事業活動を公的に認める」という、安全とコンプライアンスの証明書です。
もし、道路交通法に定められた手続きを怠り、無許可で道路を使用した場合、工事の中断、罰金、そして何よりも企業の信用失墜という、大きな代償を支払うことになります。
本コラムでは、道路使用許可がなぜ必要なのか、そしてスムーズに許可を取得し、安全かつ円滑に事業を進めるために、行政書士がどのようなサポートを提供できるのかを解説します。
目次
1| 道路使用許可が「必要な行為」とは?
類型1 工事または作業
類型2 工作物の設置
類型3 露店、屋台の出店、イベントの開催
類型4 その他
2| 申請手続きの流れと3つのポイント
ポイント1 申請書類の「正確性」と「説得力」
ポイント2 交通規制計画の「具体性」と「実現可能性」
ポイント3 許可が下りないケースとその回避策
3| 行政書士に依頼するメリット
メリット1 現場監督や技術者の負担をゼロに
メリット2 許可取得の迅速化と事業リスクの低減
メリット3 他の法令遵守と連携した総合的な支援
4| まとめ
1| 道路使用許可が「必要な行為」とは?

道路交通法第77条では、道路での交通を妨害したり、危険を生じさせたりするおそれのある行為について、警察署長の許可を受けるよう定めています。
この許可が必要な行為は、大きく分けて以下の4つの類型があります。
類型1:工事または作業
建設工事における道路使用の典型例です。これには、以下の行為が含まれます。
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足場の設置: 道路上に足場を組む場合。
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資材の搬入・搬出: クレーンを設置して資材を吊り上げる作業や、一時的に資材を置く行為。
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道路の掘削、復旧作業
- 路上での車両整備、清掃
類型2:工作物の設置
看板、アーチ、装飾塔など、継続的に道路上に設置する場合です。ただし、この類型は「道路占有許可」とセットで申請が必要になるケースが多いため、後述の区別が重要です。
類型3:露店、屋台の出店、イベントの開催
祭りや地域のイベント、マラソン大会、映画などのロケーション撮影などで、一時的に道路を独占したり、通行を制限したりする場合です。
類型4:その他
上記に掲げるもののほか、交通の妨害となるおそれのある行為です。例えば、車両を一時的に駐車させて大規模な引越し作業を行う場合などが該当します。
道路使用許可と道路占有許可の違い
- 道路使用許可
「警察署長」に対して申請し、交通の安全確保と円滑な交通という観点から、一時的な行為に対して許可が与えられます。(根拠法:道路交通法) -
道路占有許可
「道路管理者(国、県、市町村)に対して申請し、道路の構造の保全という観点から、継続的な施設設置(看板、電柱、ガス管など)に対して許可が与えられます。(根拠法:道路法)
多くの場合、建設工事で道路上に足場を数日間設置するなどのケースでは、この両方の許可が必要になります。
2| 申請手続きの流れと3つのポイント

道路使用許可の申請先は、工事やイベントを行う場所を管轄する警察署長です。申請書類は非常に専門的かつ詳細な内容が求められます。
ポイント1:申請書類の「正確性」と「説得力」
申請時に提出する書類は、単に形式を整えるだけでなく、交通安全に対する事業者の高い意識を示す必要があります。
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道路使用許可申請
申請者の情報、使用目的、場所、期間などを正確に記載します。 -
位置図・現況図
工事場所の周辺状況、交通の流れ、交差点の位置などを明確に示します。 -
交通規制計画図
これが最も重要です。単に「コーンを置く」だけでなく、規制区間、迂回経路、警備員の配置位置、使用する規制資機材の種類、規制時間帯を時間帯別に明確に示さなければなりません。
ポイント2:交通規制計画の「具体性」と「実現可能性」
警察が最も審査で重視するのは、**「申請された行為が、交通渋滞や事故を引き起こさないか」**という点です。
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規制範囲の最小化
必要以上に広範囲を規制していないか。 -
時間帯の配慮
通勤・通学時間帯や、近隣の商業施設の営業時間帯など、交通量が集中する時間帯を避けた計画になっているか。 -
住民・近隣店舗への周知計画
迷惑をかける近隣住民への事前の説明と協力依頼をどのように行うか。
単に図面を提出するだけでなく、警察の担当官が「これなら安全が確保できる」と納得できるレベルの具体的かつ実現可能な計画が必要です。
ポイント3:許可が下りないケースとその回避策
以下のいずれかに該当する場合、許可は下りません。
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交通の妨害が著しい場合
申請された時間帯や場所で、交通への影響が大きすぎる場合。 -
必要性・緊急性が低い場合
申請内容が道路を使用する必要性に乏しいと判断された場合。 -
申請内容が法令に違反している場合
提出書類の内容が、警察署の定める基準を満たしていない場合。
行政書士は、申請前に管轄警察署と事前協議(打ち合わせ)を行い、計画の段階でこれらの懸念点を潰し、許可がスムーズに下りる道筋をつけます。
3| 行政書士に依頼するメリット

一人親方から大手ゼネコンまで、現場のプロが最も避けたいのは、書類作成や警察との協議に時間を取られ、現場の作業が中断したり遅延したりすることです。
メリット①:現場監督や技術者の負担をゼロに
道路使用許可申請は、交通規制図の作成、専門用語を用いた申請書の記入、そして何度も続く警察署との打ち合わせなど、非常に多くの手間がかかります。行政書士がこれらすべての業務を代行することで、現場の監督者は本来の安全管理と品質管理に集中できます。
メリット②:許可取得の迅速化と事業リスクの低減
行政書士は、過去の経験とノウハウに基づき、警察署の審査基準に合致した図面や計画書を迅速かつ正確に作成します。これにより、差し戻し(書類の修正依頼)を最小限に抑え、許可取得までの期間を短縮できます。これは、工期厳守が求められる建設業にとって、大きなアドバンテージです。
メリット③:他の法令遵守と連携した総合的な支援
道路使用許可の申請には、建設業許可や産業廃棄物処理に関する知識が間接的に必要になることもあります。行政書士は、御社の事業全体を見渡し、必要な他の許認可手続きや報告義務(例えば、決算後の事業年度終了届など)と連携して、総合的なコンプライアンス体制を構築します。
4| まとめ

許可証を取得することは、法律を守り、近隣住民の安全に配慮しながら事業を行う、信頼できる企業であることの証明になります。
もし、道路使用許可申請について少しでもご不安があれば、ご相談ください。建設工事や解体工事など、あなたの事業が安全かつスムーズに進むよう、書類と手続きの面から万全の体制でサポートいたします。

執筆者
行政書士おちあい事務所 行政書士 落合真美
遺言や相続、建設業や産廃業などの許可申請でサポートを提供。人に、会社に、寄り添うことを大切にしています。