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こんにちは。行政書士の落合です。

行政にいた頃を含め今に至るまで、遺言を通して「家族の絆」の尊さ、それと同時にその脆さを実感しています。特に法律相談ではこの手の事に発展する可能性のある相談が多くあります。

相続の場面では、良かれと思って遺した遺言書が、遺された家族にとって、悪い意味での「びっくり箱」になってしまうケースが少なくありません。蓋を開けてみるまで中身がわからず、開けた瞬間に驚きと悲しみ、そして怒りが飛び出してしまう……。そんな「不意打ち」の遺言書は、どれだけ形式が整っていても、家族を幸せにはしません。

本コラムでは、家族が笑顔でバトンを受け取るために知っておきたい「遺留分(いりゅうぶん)」の基本と、実現可能な遺言書づくりの秘訣を、実務の視点から解説します。

1| 遺留分とは ~ 家族の生活と公平を守る「最後の砦」~

遺留分とは、簡単に言えば「亡くなった人の意思(遺言)よりも優先される、相続人の最低限の取り分」のことです。

たとえ遺言書に「特定の誰かに全財産を譲る」と書かれていても、配偶者や子供、父母には、法律で保障された「予約済みの枠」があります。これが遺留分です。もし、遺言書の内容がこの遺留分を下回っていた場合、少なく見積もられた相続人は、多くもらった人に対して「足りない分をお金で払って」と請求することができます。

ここで一つ、よくある実例を見てみましょう。

 

【事例】介護を尽くした長男と、長年疎遠だった次男

 

Aさんは妻に先立たれた後、長男のBさん夫婦が自宅で日常の世話をしていました。Aさんは、感謝の気持ちを込めて「すべての財産(自宅と預貯金)を、苦労をかけた長男Bに相続させる」という公正証書遺言を残しました。認知症を発症後も、Bさん夫婦は献身的に介護を続けてきました。一方、次男のCさんは、仕事の忙しさを理由にお盆もお正月も帰省せず、Aさんの入院時も見舞いに来ることはありませんでした。

Aさんが亡くなった後、この遺言書の内容を知った次男Cさんは激怒します。「兄弟なのに一円ももらえないのはおかしい」と、長男Bさんに対して遺留分侵害額請求を行いました。

長男Bさんは、父の願い通りにすべてを引き継げると思っていましたが、法律上、次男Cさんの遺留分(この場合4分の1)を現金で支払う義務を負うことになったのです。Bさんは自宅を守るために、自分の貯金を取り崩して支払いに充てなければなりませんでした。

 

 

2|  2019年の法改正 ~すべては「現金」での解決へ~

上記の事例で、長男Bさんが現金を支払わなければならなくなったのは、2019年(令和元年)の法改正が大きく関わっています。

以前は遺留分を請求すると、不動産などの持ち分がバラバラに「共有」されてしまうことがありました。しかし、現在は「すべて現金で精算する」というルールに一本化されました。家や土地という形のある財産を守りやすくなった反面、多く相続した人には「まとまった現金を用意しなければならない」という重い負担がのしかかります。

遺言書を書く際は、受け取る側がその現金を支払えるだけの余裕があるか、あるいは生命保険などでその資金を準備できているかまでをセットで考える必要があるのです。

 

 

3| 公証役場で作成すれば「安心」なのか?

公正証書遺言を作る際、公証人は必ず「この内容は遺留分を侵害していますが、よろしいですか?」と確認してくれます。しかし、公証人はあくまで中立な立場。本人が「それでもいい、これが私の意思です」と言えば、遺言書を作成してくれます。

つまり、「公証役場で作った=親族が納得する」ではありません。 形式は完璧でも、中身が家族にとっての「不意打ち」であれば、それはやはり争いの火種になります。

このように公証役場は内容を法的に保証するわけではありませんから、争いごとに発展する可能性がゼロというわけではないことをご承知おき頂く必要があります。

 

 

4| 遺言書を「最高の贈り物」にするための行政書士の役割

行政書士は、単に書類を作成するだけが仕事ではありません。こうした悲しい争いを防ぐために、以下のようなサポートを大切にしています。

「付言(ふげん)事項」の活用
​なぜそのような配分にしたのか。先ほどの事例であれば、「B夫婦には長年の介護で心身ともに負担をかけた。その感謝として、この家でこれからも暮らしてほしいと願っている」といった言葉を添えることです。

専門家ネットワークによるワンストップ対応
遺留分を巡ってどうしても感情的な対立が解けない場合や、法的な交渉が必要になった場合には、信頼できる弁護士をスムーズにご紹介します。また、税務の面では税理士と連携します。

事前アドバイス
遺言書を隠しておくのではなく、可能なかぎり元気なうちに、家族で集まって想いを共有する場を持つことをお勧めしています。これこそ、事前にできるとても重要な対策とも言えるでしょう。

 

 

5| まとめ~「話し合い」という最大の生前対策~

遺言書を準備することは、素晴らしい愛の形です。しかし、それ以上に大切なのは、「生前の話し合い」です。

遺言書は『書くこと』がゴールではありません。書いた内容が、その通りに『実現されること』が本当のゴールです。

法律上は有効な遺言であっても、残された家族が納得していなければ、遺留分の請求が起き、結果として大切な財産(家など)を手放すことになりかねません。内容を実現可能にするためには、生前に「なぜこの配分なのか」を共有し、家族それぞれの心情に寄り添うプロセス、つまり『話し合い』という土台作りが不可欠なのです。

  • 自分の死後、家族にどう生きてほしいのか。
  • なぜこの財産をこの人に託すのか。

事務所では、一つひとつのご相談に地道に、誠実に向き合うことを信条としています。また、多くの他士業の先生方とのご縁を大切にしているのも、依頼者様のあらゆる不安に寄り添いたいと考えているからです。

あなたの「安心」と、ご家族の「絆」を守るために。まずは最初の一歩としてご相談ください。一緒に、後悔のない、安心した未来をデザインしてみませんか。

 

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行政書士おちあい事務所 
行政書士 落合真美

遺言、任意後見、死後事務委任などの生前対策や相続手続き、各種許可申請などでサポートを提供。人に、事業に、寄り添うことを大切にしています。

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