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こんにちは。行政書士の落合です。

以前より「空き家」に関連するコラムを書いておりますが、今回は少し視点を変えて「予防」の視点から。

言わずもがな、今、日本中で「空き家問題」が深刻化しています。テレビや新聞で放置された廃屋のニュースを見るたびに、「うちは大丈夫だろうか」と不安を感じる方も多いはずです。しかし、多くの人が見落としている視点があります。それは、空き家対策とは「空き家になってからどうするか」ではなく、「空き家にならないように今何をすべきか」という「予防」こそが本質であるということです。

実家や今住んでいる家が、将来、誰の手にも負えない「負動産」に変わってしまうのか、それとも大切な「資産」として次世代に引き継がれるのか。その分岐点は、居住者が元気なうちの「話し合い」と「法的準備」にかかっています。

今日はそんな事前の対策について考えていただくヒントになれば幸いです。

目次

1| なぜ「予防」がこれほどまでに重要なのか

2| 空き家を予防するための「3つの生前対策」
 1. 遺言書の作成:承継者を明確にする
 2. 生前贈与:早い段階で権利や義務を移転させる
 3. 家族信託や任意後見契約:認知症リスクへの備え

 

3| 最も大切なのは「家族の話し合い」という儀式

4| 専門家が「予防」の現場でできること

5| まとめ ~空き家」という問題を、次世代への「資産」に変えるための決断

 

 

1| なぜ「予防」がこれほどまでに重要なのか

まず、総務省統計局のデータを見てみることにしましょう。
現在、最も新しい確定値は「令和5年(2023年)住宅・土地統計調査」の結果です。

  • 空き家数:約900万戸(過去最多を更新)

  • 空き家率:13.8%(およそ7〜8軒に1軒が空き家)

●ここがポイント!!●
 30年前(1993年・平成5年)の空き家数は約448万戸でした。つまり、この30年で空き家は2倍に増えていることになります。これが現実です。

 

一度空き家になってしまうと、その解決には膨大なエネルギーが必要になります。

  • 相続登記の義務化
    2024年4月から相続登記が義務化され、放置すると過料の対象となる可能性があります。

  • 管理責任の増大
    特定空き家に指定されると固定資産税が最大6倍になるほか、倒壊や害虫発生で近隣に迷惑をかけた場合、所有者は多額の損害賠償を問われるリスクがあります。

  • 資産価値の低下
    建物は人が住まなくなると急速に傷みます。放置すればするほど、売却も賃貸も難しくなり、解体費用だけがかさむ負の遺産となってしまいます。

これらの問題を、残された家族が解決するのは並大抵のことではありません。だからこそ、今いる居住者が元気なうちに「一線を引く(自分の代で整理をつける)」という姿勢が必要なのです。

 


 

 

2| 空き家を予防するための「3つの生前対策」

万が一のことがあったとき、家が「宙に浮く」のを防ぐためには、法的な裏付けを持った準備が不可欠です。

 

1. 遺言書の作成:承継者を明確にする
空き家発生の最大の原因は「誰が継ぐか決まっていないこと」による遺産分割協議の難航です。 「長男に継がせる」「売却して現金で分ける」など、居住者の意思を遺言書(できれば公正証書遺言)で明確にしておくことで、相続開始と同時にスムーズな名義変更の実現につながります。

 

2. 生前贈与:早い段階で権利や義務を移転する
将来その家を管理・活用する意思がある家族がいるならば、生前に贈与してしまうのも一つの手です。ただし、税負担(贈与税)の問題があるため、相続時精算課税制度などの活用を含め、専門家を交えた事前のシミュレーションが欠かせません。

 

3. 家族信託や任意後見契約:認知症リスクへの備え
「家を売りたいけれど、親が認知症で判断能力がなく、売買契約ができない」……。こうした事態を防ぐのが家族信託や任意後見契約です。元気なうちに権限を信頼できる家族や知人、あるいは専門家に託しておくことで、居住者が施設に入所した後でも、託された方によって家を売却し、その費用を介護費にあてることが可能になります。どちらが向いているのか、個別に検討する必要があります。

 

 

3|  最も大切なのは「家族の話し合い」という儀式

今回は事前の対策という視点からのお話しなりますから、絶対に避けて通れないのが「家族での話し合い」です。

「親は家を残したいと思っているが、子供は遠方に家を買っており、継ぐ気がない」

「子供たちは平等に分けたいと思っているが、不動産は切り分けられない」
 

こうした親子の「思いのズレ」が、後に家を空き家へと変貌させます。

 

「寂しいから話を切り出せない」

「縁起が悪いから触れない」

という感情に流されてはいけません。自分の人生を自分で締めくくるという「自立した姿勢」を持ち、家族が一堂に会した時に、真正面から家の将来について語り合うことが、家族を疲れさせないための最大の配慮です。

 

 

4| 専門家が「予防」の現場でできること

「どこから話し合えばいいのかわからない」
「法的な手続きが難しそう」

と感じるかもしれません。ここで専門家を活用するメリットが生きてきます。

  • 現状分析とリスク診断
    現在の不動産の状況や家族構成から、将来空き家になるリスクを客観的に診断します。

  • 最適な手法の提案
    遺言、贈与、あるいは信託。その方やその方のご家族の状況に合わせた最適な「予防策」をコンサルティングします。

  • 心のクッション役
    家族だけで話し合うと感情的になりがちなテーマも、第三者である専門家が介在することで、冷静に「法務・実務」の視点から議論を進めることができます。

 

 

 

5| まとめ ~「空き家」という問題を、次世代への「資産」に変えるための決断~

空き家問題は、ある日突然発生するものではありません。今、その家に住んでいる方が「将来、この家をどうしたいか」という意思を曖昧にしたまま、時が過ぎてしまうことから始まります。

本当の空き家対策とは、廃屋を壊すことではなく、

「空き家になる前に、出口を決めておくこと」

に他なりません。

「自分が元気なうちに、遺言や任意後見、家族信託といった法的な道筋をつけておく」。

この自立した決断こそが、将来、あなたの愛した住まいが「近隣に迷惑をかける廃屋」や「家族が押し付け合う負債」になるのを防ぐ、唯一にして最大の手段です。

「いつか考えればいい」という先延ばしは、結局のところ、大切な家族に重い判断を丸投げすることになってしまいます。ご自身が築き上げてきた人生の結晶である「家」を、最後まで責任を持ってコントロールする。その姿勢こそが、残された家族への最高の思いやりともなるはずです。

住まいの未来を、家族の「安心」という形に変えるために。 まずは、あなた自身の想いを聞かせていただくことから始めてみませんか。

 

執筆者

行政書士おちあい事務所
行政書士 落合真美

遺言、任意後見、死後事務委任などの生前対策や相続手続き、各種許可申請などでサポートを提供。人に、事業に、寄り添うことを大切にしています。

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